不安感・微熱・食欲不振に悩む50代女性の自律神経失調症に対する鍼灸症例|福岡市の鍼灸院あんどむ
患者様のお悩み
福岡市城南区在住のA・Mさん(50代・女性)は、2年前に「自律神経失調症」と診断されました。5
それ以来、心身のちょっとした変化にも敏感になり、「これも病気ではないか」と不安が膨らんでしまう毎日が続いていたといいます。
特に昨年、長年一緒に過ごしていた愛犬を亡くされたことをきっかけに、悲しみと喪失感が重なり、気分が沈みがちに。
以来、不安感が強まり、身体のちょっとした違和感に過敏に反応し、病院をいくつもまわる日々が続いたとのことです。
また、微熱、食欲の低下、不整脈、手足のしびれ、やる気が出ない、気分の落ち込みなど、心と身体の不調が重なるように現れ、より一層の不安を感じていらっしゃいました。
「自分は以前は健康だったし、外出も好きだった。なのに、今は少しの不調でも動揺してしまう」と、過去の自分と今の自分のギャップに戸惑い、焦りを感じているご様子でした。
心療内科を受診され、抗不安薬や不整脈の薬を処方されているとのことですが、「薬だけでは根本的な改善になっていない気がする」と感じていたそうです。
漢方薬も試しましたが、思うような変化を感じられず、「自分の力で少しでも前向きに体を整えていける方法があれば」とインターネットで探していたところ、当院のホームページをご覧になり来院されました。
鍼灸の経験は過去にもあり、「痛くない施術」「じっくり話を聞いてくれる環境」「体と心を一緒に整えるアプローチ」を希望されています。
不調が落ち着いたら、また以前のように、娘さんやお孫さんの家に気軽に遊びに行ったり、外食を楽しんだりしたいというお気持ちを語ってくださいました。
鍼灸師の見立て
A・Mさんのお話をじっくりと伺い、お身体の状態を東洋医学的な脈やお腹の反応、全身の触診を通して確認させていただきました。
まず印象的だったのは、「健康だった自分」と「今の自分」との間で葛藤されているという心の状態でした。
特に愛犬を看取ったご経験が、心の深い部分でエネルギーを消耗されており、その後の体調不良に対しても過敏にならざるを得なかったのだと感じました。
身体の状態としては、以下の特徴が見られました。
脈診・腹診より: 胃腸の疲れ、気のめぐりの滞り、自律神経のバランスの乱れが顕著。
全身の触診より: 首〜肩〜背中にかけて緊張が強く、呼吸が浅くなっている。
気になる所見: 「天枢」「関元」「百会」といった自律神経やメンタルの不調に関わるツボに反応が見られました。
特に「気(エネルギー)」の不足と、「気の巡りの滞り」が同時に起こっており、これにより胃腸機能が弱り、睡眠や情緒の不安定さにもつながっていたと考えられます。
施術方針
施術は、次のような2つの柱で進めました。
全身を整える施術
自然治癒力を引き出し、自律神経やホルモンバランスを整えるため、気・血・水の巡りを高める施術を中心に。
具体的には、背中・お腹・足などにある、自律神経の調整や精神安定に関わるツボを使用しました。
つらい症状をやわらげる施術(局所)
特に気になる症状である「不安感」「食欲不振」「浅い呼吸」にフォーカスし、その都度、身体の状態を見ながら対応しました。
鍼は極細(0.12mm)のものを使用し、刺激量は最小限に。お灸も温かさを心地よく感じられる程度に調整し、毎回の施術を「安心できる時間」として感じていただけるように工夫しました。
施術のペースと目安
最初の1ヶ月間:週1回の施術で土台づくり(全身のめぐりの改善、自律神経の安定)
2ヶ月目以降:10日に1回のペースで継続しながら、体調の波を小さくしていく
目安としては、3ヶ月前後で日常生活の不安感が軽くなり、再発予防のメンテナンスへと移行していくことを想定しました。
施術の経過
初回〜1ヶ月(週1回ペース)
初回の施術後は、施術そのものには安心感を感じていただけたようでしたが、すぐに大きな変化があったわけではありませんでした。
むしろ「少し体がだるく感じた」とお話されていましたが、これは長く張りつめていた緊張が少し緩んだことの反応と考えられます。
2回目〜3回目の頃には、「施術後2日間ほど微熱が出なかった気がする」「食欲も少し戻ってきた」といった小さな変化が現れ枚sた。。
この時点ではまだ不安感は強く、「またいつ具合が悪くなるかわからない」と常に構えているご様子がありました。4回目以降は、施術を重ねることで少しずつ「身体の反応を過度に怖がらなくなってきた」「少し気がラクになってきた」と変化が見え始めました。
2ヶ月目(10日に1回ペース)
徐々に、「朝の不安感が前ほど強くない」「娘や孫と過ごす時間が楽しめるようになった」など、生活に前向きな感情が増えてきました。
この頃には、胃の不快感や食欲不振もほぼ気にならなくなり、「気づいたらちゃんとお腹がすくようになっていた」と話されました。
また、「眠れない」と悩んでいた睡眠の質についても、「寝つきが悪い日もあるけど、前みたいに不安で起きてしまうことは減った」とおっしゃっています。
施術時には、お身体の状態に応じてツボの組み合わせを毎回調整しながら、心の波に合わせたサポートを行いました。
3ヶ月目以降(メンテナンス期)
不安感に波があっても「自分でなんとかできる」と感じられるようになり、行動範囲も少しずつ広がりました。
以前は微熱が出ただけでPCR検査を何度も受けていたというA・Mさんでしたが、「今は、心因性のものだと受けとめられるようになった」と、大きな変化を実感されていました。
ご本人の感覚として、「絶好調ではないけど、以前のように“どうしていいかわからない”ということはない」とお話くださり、通院ペースも月1回程度のメンテナンスへと移行しました。
涙が出たのは、話をちゃんと聞いてもらえたから|50代女性
鍼灸は過去にも受けたことがあったのですが、ここまで「自分の話をじっくり聞いてくれる」ところは初めてでした。
特に初回は、先生が丁寧に私の過去のことまで聞いてくださり、涙が出てしまいました。
愛犬を亡くしてから、心も体もバラバラになったようで、不安で毎日病院をはしごしていたのが嘘みたいです。
施術を受けるうちに、「今日はこれができた」「明日はこれをしてみよう」と思えるようになり、自然と気持ちも前向きになりました。
微熱が続くと、コロナ?何かの病気?と怖くて何度も検査に行っていましたが、今では「あ、またいつものやつだ」と落ち着いて対処できるように。
食欲も戻り、娘や孫と過ごす時間も心から楽しめています。
正直、最初は「鍼で気持ちが楽になるなんて」と半信半疑でしたが、心と体は本当に繋がっているんだと実感しました。
これからも、定期的にメンテナンスに通いたいと思っています。
※このご感想はあくまで患者様個人のご感想であり、鍼灸施術の効果を保証するものではありません。
鍼灸師より一言
A・Mさんの症例は、「不安」という感情が、どれほど身体に影響を与えるのかを改めて考えさせられるものでした。
そして同時に、「丁寧に話を聴く」「安心できる場をつくる」ことが、どれほど体の力を引き出すのかを実感させてもらいました。
愛犬との別れを通して、A・Mさんの心は深く傷つき、同時に体もエネルギーを失っていました。
けれど、施術を重ねながら少しずつ自分自身を取り戻していく姿を見て、「人は必ず回復する力を持っている」と、私自身も励まされる想いでした。
「気づいたら食欲が戻っていた」「前ほど怖くない」「今は娘や孫と笑える」
—— そんな何気ない一言が、どれほど価値のある回復か、私たちは知っています。
これからも、A・Mさんのように、「心と体の声に寄り添う鍼灸」を続けていきたいと思います。
心と体、どちらか片方だけでは本当の安心には届かない。
だからこそ、全身をやさしく整える鍼灸があります。
鍼灸師 綿貫雄二