眠れない・不安が止まらない40代女性への鍼灸症例
こんにちは、鍼灸師の綿貫雄二です。
「夜眠れない」「不安で外に出るのもつらい」「身体も心も疲れきっている気がする」
そんなお悩みを抱えている方へ、実際に鍼灸施術を通じて少しずつ変化していった40代女性の症例をご紹介します。
薬に頼ることができず、様々な病院や心療内科を経てたどり着いた鍼灸という選択。
音や光に敏感で外出もままならなかった日々が、施術を重ねる中で少しずつ和らぎ、
「今日は朝から軽やかに動けた」と笑顔で話されるようになるまでの経過を、
鍼灸師の視点とともに丁寧にまとめました。
今、あなたが同じようなつらさを抱えているのなら——
その苦しみには、きっと寄り添える道があります。
ぜひ、読み進めてみてください。
患者様のお悩み
もともと心配性な性格で、昔から人間関係や環境の変化に敏感でした。若い頃から不安感や落ち込みを繰り返していて、自律神経の乱れや過敏性腸症候群、うつ症状が出るたびに病院や心療内科に通ってきました。
最近は特に睡眠が浅く、朝スッキリ起きられないことが続いていて、日中も眠気に悩まされています。車の運転ができない日もあり、家から出られないと感じることもあります。CPAPで無呼吸の治療をしていますが、ぐっすり眠れた実感がなく、気持ちが沈んでいくばかりです。
身体的には、首・肩のこり、慢性的な腰痛、呼吸のしづらさ、目の疲れやまぶしさ、胸の圧迫感、手のしびれなど、多くの症状に悩まされています。駅のホームやお店のBGMがつらく感じるほど、音や光に敏感になってしまい、外出も億劫です。聴覚や視覚の過敏さは日常生活に支障をきたし、人が多い場所では強い不安を感じてしまいます。
心の面では、家庭環境の影響もあり、アダルトチルドレンとしての生きづらさを感じています。夫は発達障害があり、私自身が体調を崩しているときにも気遣いがなく、つらさが倍増します。子どもたちの不登校や体調不良も心配で、常に気が休まらない毎日です。
薬は副作用が出やすく、なるべく薬に頼りたくありません。自分の体の力で元気を取り戻したい。できれば自然な方法で、自律神経を整えて、夜はぐっすり眠れて朝は気持ちよく目覚めたいです。日常の小さな喜びを感じながら、笑顔で子どもたちと過ごせるようになれたら…それが今の私の一番の願いです。
鍼灸師の見たて
初回のカウンセリングでは、時間をかけてじっくりとお話を伺いました。ご本人の言葉からは、長年にわたる心身の緊張と疲れ、そして「なんとかしたいけれど、何から始めていいのかわからない」という切実なお気持ちが伝わってきました。
身体を丁寧に診ていくと、脈の力が弱く、リズムも不安定で、身体の芯の力がかなり落ちている印象がありました。お腹も冷えや緊張が強く、全体的に「巡り」が滞っている状態です。背中の筋肉はこわばりが強く、ストレスの蓄積と自律神経のアンバランスが見られました。
東洋医学では、心と身体は深くつながっていると考えます。今回のような症状の背景には、長年にわたる心の緊張、過度な気の使い方、家庭内のストレス、光や音といった外部刺激への敏感さなどが重なって、身体が常に「交感神経優位=戦っている状態」になっていると捉えられます。
施術の方針としては、まず自律神経を整えるための全身の調整を行いつつ、今一番つらい症状(眠れない、不安感、息苦しさなど)をやわらげる局所の施術も並行して行っていきます。
使用する鍼は、繊細な調整が必要な方に適した極細の鍼で、皮膚への刺激も最小限に抑えています。また、お灸は温度調整が可能なものを使用し、心地よい温かさで副交感神経を優位にすることを狙っています。
週に1回のペースで3か月程度通っていただくことで、心身のバランスを整える土台ができてきます。ご本人も話すたびに少しずつ表情がやわらぎ、自分の気持ちに気づいていけるようになる過程もまた、大切な施術の一部です。
施術の経過
初回の施術では、まず身体全体の緊張をやわらげることを重視しました。極細の鍼と温かなお灸を用い、背中とお腹を中心に、全身の巡りを整える施術を行いました。施術後は「少し呼吸がしやすくなった」とのご感想があり、少しほっとされたようなご様子でした。
2回目の施術後、久しぶりに2日ほどぐっすり眠れたという報告がありました。ただ、その後お子さんの行事などが重なり、疲労とストレスでまた眠れない日々が戻ってきたとのこと。耳のつまり感や息苦しさも再び強く感じるようになったそうです。
その後も週に1回の施術を続けながら、心の波に合わせたケアを行いました。睡眠の質が安定する期間が少しずつ増えてきた一方で、家族や環境の変化があるたびに不安感や息苦しさが出てくるという波のある状態が続きました。
3か月目あたりからは、施術直後だけでなく、日常生活の中でも「呼吸が少し楽」「朝の目覚めが少しよくなった」と感じる時間が増えてきました。以前は電車に乗れなかったのが、バスで通院しながら駅に近づくことにも少しずつ慣れてこられました。
5か月目には「夕方に軽い不安感が出るけれど、以前のような強い動悸は減った」とのお声もありました。睡眠についても、抗不安薬を補助的に使いつつ、眠れる日が安定してきたとのことでした。
ただし、生活の中で急なストレスがかかると、調子が悪くなることもありました。特にスーパーなど人混みでの不安感は強く、耳の響きや不眠が再発することもありました。その際は、頭部や背中の施術を中心に副交感神経を高める施術を行い、緊張をやわらげていきました。
7か月を経過した頃から、日によっては「朝から軽やかな気分で過ごせた」とのお声が聞かれるようになり、表情にも少しずつ明るさが戻ってこられた印象があります。今も波はありますが、「落ち込む日があっても戻りやすくなった」との実感を得ていらっしゃるようです。
先生の鍼とすべて聞く姿勢に救われた 40代女性 宗像市
長い間、不安感と眠れない日々に悩まされてきました。心療内科にも通い、薬も飲んできましたが、副作用が出やすく、どうしても体に合わないことが多くて…。このまま薬に頼らずに、少しでも自然に楽になれたらという気持ちで、あんどむさんを訪ねました。
最初は正直、「鍼で本当に変わるのかな?」という不安もありました。でも、初めて伺ったときに、綿貫先生が私の話を一つひとつ丁寧に聞いてくださって、「こんなに分かってもらえたのは初めてかもしれない」と思ったのを覚えています。施術はまったく痛くなく、むしろ安心できるような感覚で、心も身体もふっと緩んだ気がしました。
すぐにすべてが良くなったわけではありません。でも通ううちに、少しずつ眠れる日が増えたり、朝起きるのが楽になったりして、「変わってきたかも」と感じられるようになりました。私のように波のある不調を抱えている人にとって、「戻りやすくなる」「立ち直りやすくなる」というのは大きな変化です。
あんどむさんでは、施術だけでなく、心のケアもしてもらえる感じがしています。これからも、焦らず、自分のペースで少しずつ元気になっていけたらと思っています。
※このご感想はあくまで患者様個人のご感想であり、鍼灸施術の効果を保証するものではありません。
鍼灸師より一言
初めてお会いした日、静かにでもとても丁寧にご自身の状態を話してくださいました。「もう薬に頼りたくない」「笑顔で過ごしたい」とおっしゃったその言葉には、長年の葛藤と、希望の両方が込められていたように感じます。
身体に現れる不調の多くは、目に見えない心の疲れや、我慢してきた想いの表れでもあります。聴覚や視覚の過敏、不眠、息苦しさ、ささいな刺激に対する反応…。それらは決して「弱さ」ではなく、これまでずっと気を張って、頑張って生きてこられた証なのだと私は思っています。
施術を重ねるなかで、眠れる日が少しずつ増え、不安の波も徐々に穏やかになっていきました。もちろん、波がゼロになることはありません。でも、波がきても沈まずに乗り越えられる力が、確実についてこられたと思います。
「ここに来るとホッとする」「身体だけじゃなく、心も整う気がする」と言っていただけたことが、何よりうれしかったです。
どんなに暗い夜も、必ず朝が来ます。
私たちは、その朝を一緒に迎えるための、静かな灯でありたいと思っています。
これからも無理なく、ご自身のペースで歩んでいかれることを、心から応援しています。
鍼灸師 綿貫雄二