動悸 息苦しさ 不眠で悩む40代女性への鍼灸症例
こんにちは、鍼灸師の綿貫雄二です。今回は、動悸、不安感、不眠、息苦しさなど不調が多岐にわたる40代女性に対する鍼灸症例です。
患者様のお悩み
4月のある日、突然耳鳴りと動悸が起こり、軽いパニックに襲われました。それをきっかけに、不安感が強くなり、胸のざわざわした感じ、動悸、息苦しさ、不眠、胃のムカムカ、めまいのような症状が日常的に現れるようになりました。漢方薬を毎日服用しており、不安が強くなったときには不安薬を頓服で使っていますが、心から安心できる状態にはなかなか戻れずにいます。
日中は比較的落ち着いていますが、夜になると症状が悪化し、特に眠っている途中で何度も目が覚め、そのたびに胸のざわつきや不安感が襲ってきて、再び眠るのが難しくなります。毎晩、湯船にゆっくり浸かり、ヨガや瞑想などを取り入れて自分なりに努力しているのですが、改善の兆しが見えず、不安ばかりが募っていきました。
今までに内科、心療内科、精神科、耳鼻科、脳神経科と、いくつもの医療機関を受診しました。さまざまな検査を受け、薬を試しても、根本的な改善には至りませんでした。身体のどこにも異常がないと言われる一方で、私は毎日の生活の中で不調を強く感じています。
本当は、夜ぐっすり眠れるようになって、朝すっきり目覚めたい。子どもたちと心から笑って過ごしたいし、自分のことをもっと楽しめる毎日に戻りたいと思っています。でもこのままだと、また急に不安が襲ってくるのではないかと、心のどこかでいつも構えてしまっています。
「薬に頼りすぎたくない」という気持ちもあり、もっと身体全体を見てもらえて、丁寧に話を聴いてくれるような施術を探していました。そんな時に、鍼灸という方法があることを知り、こちらの鍼灸院でなら心と身体の両方に向き合ってもらえるかもしれないと感じて、受診を決意しました。
鍼灸師の見たて
初めての問診時、患者様のお話をじっくり伺いながら、脈やお腹、背中の状態を丁寧に診させていただきました。お身体の状態からは、自律神経が過敏になっていること、特に「交感神経」が常に緊張している状態であることがうかがえました。交感神経は緊張や不安、焦りといった感情に強く反応するため、呼吸が浅くなったり、動悸が起こったり、夜中に目が覚めたりという状態が続いていたのだと思われます。
東洋医学の視点では、気(エネルギー)の流れがうまく巡らず、特に「心(しん)」と「肝(かん)」の働きに負担がかかっている状態と捉えました。「心」は精神活動をつかさどり、「肝」はストレスに対しての調整を担っています。この二つのバランスが崩れると、不安感やイライラ、眠れないといった症状が出やすくなります。また、脈や背中の緊張からは、「身体が常に戦っているような状態」が見て取れました。
これまでの経緯から、体だけでなく心のケアも必要と判断し、まずは「今一番つらい症状(不安感・不眠・動悸・息苦しさ)」を少しでも和らげながら、全身の巡りを整えていくことを目標としました。
施術では、自律神経を穏やかに調整する細い鍼を使い、緊張した神経やこわばった筋肉にやさしくアプローチしていきました。また、お腹や手足、頭などにも鍼やお灸を施し、身体全体のバランスを整え、心身が自然に落ち着いていけるようなサポートを続けました。
施術ペースは、最初の1か月は週に1回、その後は症状の変化に応じて10日に1回~2週間に1回の頻度で進めていきました。特に不眠や不安感が強く出ている時期には、間隔を空けすぎず、定期的なアプローチをすることが大切です。鍼灸は一回で劇的に変わるというよりも、積み重ねで少しずつ変化を実感できるものです。その都度、体調やお気持ちの変化に合わせた調整を心がけてまいりました。
施術の経過
2023年10月末に初めて施術を受けられた際は、不安感や動悸、息苦しさ、不眠といった症状が重なり、日常生活にもかなり影響が出ている状態でした。お話を丁寧に伺いながら、脈やお腹、背中などを診て、まずは過緊張した自律神経をゆるめ、身体の巡りを整えることを目的に施術を始めました。
初回から数回は、眠りの質や耳の詰まり感などの症状に波がありながらも、「施術の翌日は少し眠れるようになった」といった変化も見られました。ただ、子どもたちの行事が続いた三連休など、忙しさや環境の変化があると症状がぶり返しやすい傾向がありました。
11月中旬には「1週間しっかり眠れた」という日があり、ご本人も少し希望が見えてきた様子でしたが、やはり周期的に不安感や息苦しさ、耳の閉塞感などが出ては引いていく波のある状態が続きました。12月にはお父様の入院が重なり、再び不安感や不眠が強く出る時期もありました。
2024年に入り、抗うつ薬の変更なども試された時期がありましたが、薬の副作用による気分の落ち込みや動悸、不眠が悪化し、服用を中止することとなりました。この頃から、施術の際にはより交感神経の高ぶりを和らげるポイントに重点を置き、頭部や背中へのアプローチを強化しました。
春頃には、「鍼を受けた後は息がしやすくなる」「夜中に目が覚めても以前よりは落ち着ける」といった小さな前向きな変化が増えてきました。4月末には、新しい心療内科にかかり始め、不安薬を就寝前に服用することで眠れる日も出てきました。その一方で、ストレスの多い日や人混み、スーパーなどでは急に不安感が強くなることもあり、施術ではその都度、心身の状態を確認しながら対応しました。
6月には再び不安感や不眠が強くなる波が見られましたが、それでも「一時期に比べるとだいぶ落ち着いてきた」とご本人の中でも変化を実感できる場面が増えていました。
長期にわたり、波がありながらも施術を積み重ねることで、少しずつ「安心できる時間」「身体が楽に感じる時間」が増えていったように思います。
身体と心に寄り添ってくれる場所 福岡市南区 40代女性
初めて不調が出たのは今年の春でした。突然、耳鳴りと動悸がして、何が起こったのかわからずにとても怖くて、軽いパニックになりました。それ以来、不安感が強くなってしまい、夜中に何度も目が覚めては、胸がざわざわして眠れなくなる日々が続きました。
内科や心療内科、耳鼻科、漢方内科などいろいろ行きました。薬や漢方も試してきました。でも「検査では異常がない」と言われて、どうしてこの症状が出るのか、自分でもわからずに不安ばかりが募っていきました。
そんな時、インターネットでこの鍼灸院を見つけて、「身体と心の両方に向き合ってくれる場所かもしれない」と感じて受診しました。初めて行ったとき、先生がとても丁寧に話を聴いてくださって、自分でも気づかなかった気持ちや、生活の中で無理していたことに気づくことができました。
鍼は全然痛くなくて、終わった後は身体がふわっと軽くなるような感覚がありました。回数を重ねるごとに少しずつ、「あ、今日は息がしやすいな」とか、「夜中に起きても前より落ち着ける」と感じることが増えていきました。
もちろん波があって、調子がいいときも悪いときもあります。でも通い続けることで、「私は大丈夫」「また落ち着ける」と思えるようになったのが、私にとってはすごく大きな変化です。
今は「良くなっていく途中なんだ」と思える自分がいます。同じように悩んでいる方がいたら、ぜひ一度先生に相談してみてほしいです。身体も心も、ちゃんと寄り添ってくれる場所があるって知るだけで、少し楽になれると思います。
※このご感想はあくまで患者様個人のご感想であり、鍼灸治療の効果を保証するものではありません。
鍼灸師より一言
初めて来院されたとき、患者様はとても緊張されていて、ご自身の不調が何に由来しているのかもわからず、不安でいっぱいのご様子でした。症状として現れていたのは、耳鳴りや動悸、不眠、息苦しさなど多岐にわたり、その背景には、長い間ためこんできた心の疲れや、休まることのない神経の緊張があると感じました。
問診の中で、ポツリポツリと語ってくださる日常のこと、家族のこと、今までの努力や不安の中で頑張ってきたお気持ちに触れ、私のほうが胸が熱くなる場面もありました。
鍼灸は魔法のように一瞬で何かを変えるものではありません。でも、何度も通ってくださり、施術を積み重ねる中で、少しずつ「呼吸がしやすくなった」「前より落ち着ける日が増えた」と実感されていく姿を見て、本来持っている回復力がゆっくりと目を覚ましていく様子に、私自身も励まされました。
不調には波があり、ときには後戻りするように感じる日もあります。でも、私たちはその一つひとつの波を一緒に乗り越えていくことができます。心と体はつながっていて、どちらか一方だけをケアしても本当の安心は得られません。だからこそ、鍼灸の施術を通じて、心と体の両方に寄り添える存在でありたいと思っています。
「不安は、理解されることで少しずつ和らぎます。」
この言葉を胸に、これからも丁寧に、真摯に、患者様と向き合っていきます。同じように悩んでいる方がいらっしゃれば、どうかひとりで抱え込まず、いつでもお話を聴かせてください。きっと、あなたにも光の差し込む日が訪れます。
鍼灸院あんどむ 鍼灸師 綿貫雄二