妊娠中の不調に対するマタニティ鍼灸の症例 35歳 主婦
マタニティ鍼灸の経過
薬の服用に制限があるマタニティ(妊娠中の方)にとって、鍼灸治療はとても優しく安全な治療法の一つです。
今回は妊娠初期から出産、産後にいたるまで継続的に鍼灸治療をお受けになられた35歳主婦の方の鍼灸症例です。
最初のご来院 妊娠11週 頭痛
-妊娠前から肩こりが酷くなった時や雨の日などには軽く頭痛があるものの、そんなに気になるほどではなかったが、妊娠後より毎日ズキズキ、ドクドクする頭痛が続いている。-産婦人科、脳神経外科に相談してみると、女性ホルモンの急激な変化のためとのことで、病気ではないので心配しなくてよいと言われた。
-妊娠初期なので薬はもらえなかった。以前、別の鍼灸院には通っていたので、何とか痛みを取ってほしい。
-肩こり、首こりもひどい。
薬の服用に制限があり、身体に余計な強い刺激や負担をかけることを避けたいマタニティにとって、鍼灸治療はとても相性の良い治療法のひとつです。
東洋医学的な見方から、お身体の「気・血・水」の巡りを整え、各臓器の働きを整え、自己免疫力を高め、自然治癒力を上げていく鍼灸治療はとても優しく安心安全な治療法です。
この方の場合、お身体の熱が上半身に集まっており、逆に下半身はとても冷えておられました。また、妊娠のストレスから全身の気の巡りが悪くなっている状態でした。
手首と足首にある熱のバランスや気の巡りを整えるツボに鍼を約10分ほどとどめておきます。その間に頭や目の周りにてい鍼と呼ばれる刺さらない鍼で整えていきました。
頭痛が治まったご様子でしたのでここで終了となりました。その後、LINEを使って経過報告をいただいておりましたが「大きな頭痛がでることはそれ以来なくなりました」とのことでした。
2回目~5回目 妊娠16週~ つわり
つわりがなかなか治まらないとのお悩みでご来院になられました。-食事前後の吐き気、胃の不快感、嘔吐がつらく、食欲がない。
鍼はまず全身の自律神経を整えるために、手首と足首にあるツボに鍼をとどめていきます。次につわりに効くツボに鍼をしていきます。
4日おきに4回鍼灸治療を行い、つわりは落ち着いていきました。
6回目~ 妊娠18週~ 腰痛、安産はり
-もともと妊娠前より仕事で長時間パソコン作業をすると痛めていた。以前は腰痛と肩こりで定期的に鍼灸院へ通っていた。-お腹が少し目立ってきたせいか、今までの痛みとは少し違って、右の腰(腰とお尻の間)が重く痛み、関節がズキズキする感じもある。
お体を観察すると、首・肩・腰・股関節と背中全般にわたって関節と筋肉のバランスが崩れていることがわかりました。その影響が右腰の関節(仙腸関節)に痛みとして現れていると判断しました。
ですので鍼は首、肩、腰、股関節に行い、左右のバランスを整えていくこととしました。
鍼灸治療後は軽くなったご様子でしたが、一週間程したらまたすぐに痛みが出てくるとのことでしたので、定期的にメンテナンスを行っていくこととしました。
その後は腰痛に対して、その他の不調が現れないようにお体を整えていき安産へと導いていけるようお身体づくりを目指すため、3週間に1回のペースで鍼灸治療を定期的に行っていきました。
そして、無事に元気な男の子をご出産されました。
妊娠中の鍼灸治療について
「妊娠中に鍼灸治療を受けても大丈夫ですか?」とよくご質問を頂きます。
「適正な技術と知識をもった鍼灸師が行う鍼灸治療は、安心安全で体に優しい治療法ですのでご安心ください。」とお答えしています。
また、当院では不妊鍼灸、マタニティ鍼灸をお受けになられる患者様に次のことも併せてお伝えしています。
1、鍼の本数や刺激量を最小限にして行います。
妊娠から出産に至る過程で女性のお身体はダイナミックに変化し、そして繊細に反応を見せます。よって当院では最小の刺激で最大限の効果をもたらすため、鍼の本数や刺激量を極力少なくしています。
2、妊娠中に良くないとされるツボは使用しません。
鍼灸治療で用いるツボは、現代科学でその効果が証明されているものから、数千年前の文献に記載されてあるものまで、その効果や信ぴょう性は様々です。
インターネットを見ますと、”妊娠中に押してはいけないツボ”ですとか”流産を引き起こすツボ”などと恐怖心をあおるページが存在しています。その一部には、確かに古代文献に記載されてあるものもあります。
当院では、過去の文献などに記載されてあるツボは使用しないこととしています。患者様に余計なご不安を与えぬようにすること、それから、そのツボを使わずとも別のツボで十分に代用できるからです。
これから不妊鍼灸やマタニティ鍼灸をお受けになろうかなとお考えの方は、適正な知識と技術、きちんと説明してくださる鍼灸師の先生をお選びいただくと、お悩みや不調の解決に役立つかもしれません。
鍼灸師 綿貫雄二
※これは鍼灸治療の一症例であり、その効果を保証するものではありません。